【BizSights】没入感のショッピングが小売業を変える:フィリピンのモール3.0時代到来

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オンラインプラットフォームが低価格競争の主役となる中、フィリピンの大型小売企業が打ち出している戦略は「体験化」だ。実店舗にしかできない、触れて、参加して、つくる体験へ。デジタル時代の新しい商業モデルが次々と生まれている。

ScreenXが映画館の存在意義を問い直した

国内有数の映画館運営企業であるSM Cinemaが昨年9月、SM Mall of Asiaにオープンさせたのが、フィリピン初となるSCREENX劇場だ。

従来の映画体験とは決定的に異なる。メインスクリーンから左右の壁面へと映像が拡張され、360度に近い没入感を実現する。韓国のテクノロジー企業CJ 4DPLEXが開発した最新技術で、4DXやUltraDXなどの映画技術も手がけている。

「大型劇場時代は終わった。若い世代が求めているのは、より深い体験なのだ」——SM Supermallsのプレジデント Steven Tanはこう指摘する。実際、ストリーミングプラットフォームへのシフトが続く中、SCREENXのようなプレミアム体験は新しい観客を呼び戻す強い力となっている。

チケット価格は1枚700ペソ。長期休暇中には『アバター:炎と灰』などの大型作品を体験できる。

アクセサリーでカスタマイズする、フラスコの体験化

サングラス小売から始まったSunnies Inc.が、別の事業軸として立ち上げたのがSunnies Flaskだ。しかし、従来の瓶詰めボトル小売とは全く異なる。

顧客は、Robo flask、Bubble flask、Pebble flaskの3タイプから選び、さらに16oz、25oz、30oz、32ozのサイズを決定する。基本価格は最も小さいサイズで695ペソから。

次に、ラバーブート(195〜245ペソ)、グライダー(195ペソ)、クリーナー(195ペソ)、スリング・バッグ(895ペソ)などのアクセサリーを自由に組み合わせていく。

特に差別化されているのが「パーソナライゼーション」だ。断熱ボトルに名前、イニシャル、任意の単語やシンボルを無料で刻印できる。フォント選択肢も豊富に用意されている。

CEO Eric Deeは次のように語った:「我々が提供するのはユニークな体験です。フラスコ自体は既存産業でしたが、ミックス・アンド・マッチのカスタマイズ機能を加えることで、その高度にパーソナライズされた経験が人々を実店舗に引き付けるのです。」

さらに、KPop人気グループDemon Huntersとのコラボレーションでは、Rumi、Mira、Zoey、Jinu、Huntrix、Soda Pop、Derpy Tigerという7種類のキャラクターフラスコを展開。それぞれにステッカーセットが付属し、フラスコのデザインカスタマイズが可能だ。

デジタル施策も並行。TikTokでのライブ販売を拡大し、従来の実店舗体験とオンライン購買を融合させている。SM Mall of AsiaとBonifacio Global Cityにはフル統合型のSunnies World店舗をオープン。アイウェア、メイクアップ、フラスコ、コーヒーが一堂に会し、カンセリングやカフェでのコミュニケーション空間も備えている。

DIYで感情が加わる、テディベアの新しい売り方

メトロマニラのモール数店舗で展開するHello Bearは、ぬいぐるみの購入を「製造体験」に変えた。

客は、中身が入っていないぬいぐるみの動物を選ぶところからスタート。機械にセットしてフットペダルを踏むと、わたが吹き込まれる。固さの調整も可能だ。

その次、電池式の赤いハート機構を追加し、人工的な心拍を持たせることができる。メッセージを録音する小型ボイスレコーダーの装着も選択肢。穴を自分で縫うか、スタッフに任せるか、着せ替え用の服や帽子、サングラス、カメラなどアクセサリーを追加し、最後に名前をIDカードに記入する。

最低価格は1,000ペソ。ガジェットやアクセサリーが増えるごとに価格は上昇する。Century City Mall、Venice Grand Canal、Newport World Resorts、複数のToys R Us店舗、Green Hillsなど、主要モール6箇所に出店している。

デジタル時代に「来店理由」を再構築する

これら三つの事例から見えるのは、小売業の本質的な変化だ。

SM Supermallsのプレジデント Steven Tanはこう指摘する:「フィリピン人、特にZ世代やアルファ世代は、単なる商品ではなく、体験を求めている。商品を並べるだけでは来てくれない。本当に引き付けられる、本当に楽しい、エンタテインメント性のあるものが必要だ。」

「MOAのSunnies Worldはパーソナライゼーション、刻印、カフェ、メイクアップコンサルタントを備えている。これらはオンラインでは実現不可能なもの。オンラインが代替できない価値だ。」

2026年以降、フィリピンの商業施設ではこうした没入感のある体験型小売がさらに増加するだろう。単なる物販から「経験の販売」へ。それが、デジタル時代に実店舗が生き残るカギとなっている。

Rappler.com

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